神様だってよそ見する

アイドルって凄いなあと思いつつぼんやり生きてる奴のブログです

第二弾 マイドヨルの妄想族

マイPさんの企画でありますマイドヨルの妄想族!遅ればせながら第二弾です!

kstk.hateblo.jp


三枚目の写真での妄想がようやく書き終わりましたので、アップさせて頂きます!それにしても遅筆にも程があるぜ!



写真3. ゴミ捨て場に捨てられた看板人形

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僕は誰もに愛されるマスコットだ。
毎日毎日、この通りを往く人々、そして僕の背後に建つドラッグストアにやってくるお客さんに微笑みかけている。
子供は僕に触りたがるし、大人もそんな子供を見て喜ぶ。

だけど、気付いてしまった。

ドラッグストアの前には、電器屋さんがある。
ショーウィンドウにはテレビが隙間なく並べられていて、開店から閉店まで、様々な番組が映しっぱなしになっている。
僕はいつもそれを見つめていた。いや、見つめる以外の術がなかったというべきか。
株価が上がった下がった、史上最大の台風が来た、またも残忍な殺人事件、あの芸能人が結婚した、話題のドラマ、朝ドラ、音楽番組……様々な番組を見ているうちに、人間の世界には、アイドルというものが存在していることを知った。

アイドル。直訳で偶像という意味だ。
アイドルはあらゆる人の憧れの的だ。ドラマでは当然のように主役、音楽番組やバラエティなど、たくさんの番組からひっぱりだこ。そして熱愛の記事が出れば、心底嘆き悲しむファンがいる。

最初こそ、僕もまたアイドルじゃないかって思った。
だって僕はその名の通り偶像で、街の人々に愛されているのだから。
でもそんなのは思い上がりだって、しばらくしてから気が付いた。

テレビの向こうの人気者は、自由に動いて、何なら踊って歌って。微笑みを投げかければ、黄色い悲鳴が湧き上がる。そしてこれから先、ずっと愛していると、そう熱を帯びた表情で語るファンがいる。
でも僕はどうだろう。当然だけど、さっぱり動けやしないし、喋れもしない。たまにドラッグストアの店員が僕のポーズや服装を変えるぐらいで、僕自身の思い通りになることなど、一切無いのだ。
何より、僕にあれだけ夢中になっていた子供も、数年、いや早けりゃ数時間で興味を失う。テレビの向こうの人気者のように、永遠に愛していると言ってくれる人はどこにもいない。
その時気付いた。僕は、本当に愛されている訳じゃない。
アイドルなんかじゃないんだ、ってことに。


ああ、僕もアイドルになりたい。
自由に動いて、綺麗な衣装を纏って踊りたい。
そして誰かに強く、愛されてみたい……。


そんな願いを持ち続けて、数ヶ月。
その夜はまるで絵に描いたような満月で、黒いキャンバスに白砂を散らしたように、無数の星が瞬いていた。
綺麗だな、と思った瞬間、空に白い糸が引かれた。流れ星……。
思わず我を忘れて、声も出やしないのに叫んでいた。

「僕をアイドルにしてください!僕をアイドルにしてください!僕をアイドルに……!あれ?」

その時、言いようもない違和感を感じた。

「僕をアイドルにしてください……」
もう一度、呟く。
そう、呟くことが出来ている。
自分の声がプラスチックの身体に反響して、震えている。
「喋ってる……!?」
それを自覚した瞬間、身体の内側が激しく痛んだ。まるで体の中がどんどん広がっていくような感覚に襲われて、僕はあらん限りの声で叫んだ。
ミシミシと身体が軋む音が聞こえる。あまりの痛みのせいなのか、徐々に目の前が暗くなっていき、僕はいつの間にか意識を失った。


目が覚めた。
眼前には、いつも見ていた電器屋さん。
そしてオレンジの象の首……え、僕の顔?

「うわあああああああ!首取れてる!僕の首いいいいいい!」

あれ、でも、僕生きてるし。
何なら僕の首、こっち向いてるし。
僕は、どうやって僕を見てるんだ?

今更ながら自分の身体を見た。
オレンジのプラスチックだったはずの身体が、肌色の柔らかな皮膚に変わっている。
関節ひとつなく、動かせなかった腕が、動く。
手の先に付いた5本の指が、自分の思い通りに曲がる。
僕の足を固定していた土台が消えている。

もしかして……僕は人形じゃ無くなっている?

慣れない身体を動かして、電器屋さんのショーウィンドウまで這いずっていく。
ガラスに映る、見慣れない人間の顔。
僕が笑うと、そいつも笑った。
頬をつねれば、そいつも自分で頬をつねる。
ガラスに映っている人間は、僕だった。

「人間になってる……」

どうしてこんなことになったのか、どうしたらいいのか。僕は全く理解出来なくて周囲をきょろきょろと見渡した。そして後ろを見遣ると、僕だったものがドラッグストアの前に散乱している。
それを見た瞬間、何故か急に恐ろしくなって、生まれたての小鹿のようなもつれる足で、その場から逃げ去った。

僕はこの満月の夜、ドラッグストアのマスコットを辞めた。



「まあ!ちょっと酷い……」
明け方の街に、ドラッグストアの店主の悲鳴が響いた。
彼女の目の前には、首がもげ、ボロボロになったマスコット人形があった。
「可哀想に……一体誰がやったのかしら……それにしても、この子はあかんわね。こんなん、私にはもう直してあげられんわ」
そうぼやくと店主は人形を片付け、近くのゴミ置き場にマスコットを捨てた。
「また、新しい人形貰わんとねえ……全く、最近このあたりも物騒になってきて……」



数年後。
電器屋の、テレビが並べられたショーウィンドウの前に、人だかりが出来ている。
最近人気急上昇中のアイドルグループが、音楽番組に出演していたからだ。
彼らがいつものように微笑んでカメラに手を振ると、ショーウィンドウの最前列を陣取っていた女子高生たちが歓声を上げた。
続いて、グループの中の一人の男が、今回リリースする曲の説明をし始める。テレビ画面に大きく映し出されたその顔は、数年前の満月の夜、ショーウィンドウのガラスに映ったものと紛れもなく同じものだった。

そして人だかりの後方、電器屋の目の前にある薬局には、オレンジのマスコットキャラクターが立っている。彼は空虚な目で、テレビの画面と、それに群がる人々を見つめていた。

「僕も、あんな風になりたいなあ……」

そんな声が誰に聞こえるわけもなく、街往く人々に届くのは、アイドルたちの高らかな歌声だけだった。







以上!
このお話の主人公は桐山君設定。何故なら人形がオレンジだったから。安直。
加えて「アイドルになりたい!」っていう願いが桐山君っぽいかなーと。
ちなみに人間→人形の変身過程のイメージは蛹の羽化。マスコット人形の中から人間が出てくる……って感じだから、人形の残骸は消えることなくそのまま残ってたんですね。

このお話、アイディアはかなり前に出来上がってたんだけど、実際それを文章に起こすとなるとさすがに大変だった……。

そして残念なのが、一枚目の写真「ぬいぐるみが机に向かってる」っていう妄想と、テイストは違えど変身するっていうのは同じっていうね……。
やっぱり妄想の傾向って、独りでやってると似たような感じになってしまう。
そう思うと、毎度多彩なストーリーを繰り出してくるジャニーズWESTってすごいなあと、しみじみ感じた今回の妄想でした。


ちなみに前回やった妄想族はこちら。興味がありましたらどうぞ。

 

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